輻射式(放射式)冷暖房とは?エアコンとの違いやメリット・デメリットを解説

宮本 知典

九州大学工学部卒業。輻射式冷暖房「F-CON」の製品開発や国内外の熱負荷計算業務に従事。

輻射式冷暖房は、輻射熱(放射熱)を用いた冷暖房器具です。

温熱環境を構成する6要素において、主に「室温」と「輻射」をコントロールすることで、室内の温熱環境の快適性を総合的に高めるシステムです。

詳しくは「温熱環境の6要素と評価指標について」へ

輻射式冷暖房は、他にも輻射空調、放射式冷暖房、放射冷暖房、放射空調と表現されることもあります。

詳しくは「輻射式冷暖房と輻射冷暖房と放射冷暖房と輻射空調の違いは?」へ

日本の住環境において冷暖房と言えばエアコンが一般的ですが、ヨーロッパでは暖房専用の輻射式冷暖房であるセントラルヒーティングが普及しています。

本記事では、輻射式冷暖房の仕組みや種類、エアコンと比較した際のメリット・デメリットなどを解説します。

輻射式冷暖房(放射式冷暖房)とは

輻射式冷暖房とは、主に温度と輻射熱(放射熱)をコントロールし、室内の温熱環境の快適性を総合的に高めるシステムです。

輻射式冷暖房システム

輻射式冷暖房の仕組み

輻射式冷暖房は、冷房時には冷水を、暖房時には温水を室外機(熱源機)で作り、それを室内の輻射パネルに循環させることで、空間全体の温熱環境を安定的に保ちます。

特に除湿できるタイプの輻射式冷暖房は、冷房時にパネルの表面を結露させて成り行きの自然除湿を行うので、見た目も爽やかで涼しいといった特徴があります。

輻射式冷暖房の冷房時の結露の様子
冷房時に輻射パネルが結露している様子

輻射の原理

輻射とは、物体を介さずに赤外線を介して離れたところに熱が伝わる伝わり方です。

室内ではストーブやこたつ、電気ヒーターなどの暖房器具や、風のないエアコンとして支持を得ている輻射式パネルなどが輻射の原理を応用しています。

詳しくは「輻射熱(放射熱)とは?伝熱の仕組みや特徴について」へ

屋外環境では、焚き火に近づくと暖かく感じたり、洞窟に入ると涼しく感じる現象が輻射熱によるものです。

夏の洞窟のひんやり感
冬の日なたのぽかぽか感

冷房の仕組み

室外機(熱源機)で作成した冷水で輻射パネルを冷やし、室内(天井・壁・床)の熱を奪う、という仕組みになります。

輻射式冷暖房の冷房の仕組み

暖房の仕組み

室外機(熱源機)で作成した温水で輻射パネルを温め、室内(天井・壁・床)を温める、という仕組みになります。

輻射式冷暖房の暖房の仕組み

輻射式冷暖房の導入事例

輻射式冷暖房は様々な用途の施設に導入されています。

  • 戸建
  • マンション
  • 体育館
  • 病院
  • 介護施設
  • 事務所、会議室
  • 小学校、中学校
  • 保育園、幼稚園
  • 公共施設
  • 図書館
  • 商業施設

具体的な導入事例は「輻射式冷暖房「F-CON」の導入実績」をご参照ください。

温熱環境設計の重要性

輻射式冷暖房を導入する際は、熱環境の設計がポイントとなります。

室内の温熱環境を安定させるには、窓の種類やサイズ、各方角からの日射量、その地域の気象特性なども踏まえ、建物の断熱性や気密性を高めなければいけません。

下記の「おおよその体感温度」の方程式が示すとおり、輻射式冷暖房の効果を最大限発揮するためには、室内外の温熱環境に影響する要素すべてを正しく把握することが重要なのです。

$$おおよその体感温度 = \frac{気温 + 壁や天井の表面温度}{2}$$
断熱性と体感温度

詳しくは「温熱環境の6要素と評価指標について」へ

輻射式冷暖房とエアコンの仕組みの違い

輻射式冷暖房とエアコンの仕組みの違い

エアコンは風を使い、対流の原理で空間を温めたり涼しくする冷暖房器具です。

対して、輻射パネルは輻射の原理を用いて空間に作用するので、風など熱を伝える媒体がなくても空間が温まったり冷えたりします。

また、設備としての違いとして、エアコンは家庭用電化製品であるのに対し、輻射パネルは建築付帯設備という扱いになります。

 エアコン輻射式冷暖房
伝熱原理対流輻射
温熱環境要素へのアプローチ
  • 気温
  • 気流
  • (湿度)
  • 気温
  • 輻射
  • (湿度)
設備カテゴリ電化製品建築付帯設備
室内機の構造複雑シンプル
清掃複雑(多くの場合は業者に依頼)簡単(基本はパネル表面を拭き取るのみ)

輻射式冷暖房のメリット

輻射式冷暖房のメリットエアコンのメリット
  • 無風無音(無風型の場合)
  • 温度ムラが少ない
  • エアコンと比較して10~20%省エネ※
  • 清掃が簡単

※体感温度が±2℃異なるため

  • イニシャルが低コスト
  • 即効性が高

輻射式冷暖房のメリットはさまざま挙げられますが、とりわけ「温風・冷風から受ける身体的ストレスから解放されて快適な無風環境を得たい」との思いから輻射式冷暖房を選択される方が多く見受けられます。

しかし、すべての輻射式空調が無風空調とは限りません。

輻射式冷暖房の分類図
輻射式冷暖房の分類図

例えば、後述する天井式の「有風タイプ」や床下式のような送風を伴うタイプもあり、巷に出ている輻射式パネルの中には「無風感」や「風に頼らない」という表現をしているメーカーも存在します。

エアコン接続式、エアコン応用式については、エアコンの送風を用いているため、エアコンの延長もしくはオプション的な位置づけで考えた方がよいでしょう。

理由は、エアコン接続を前提とするタイプは、冷暖房能力をエアコンの能力に依存し、システム全体で考えると輻射で冷暖房する成分の割合が全体の5~20%程度になるため、海外では輻射式冷暖房と表現されていません。

「無風」と「無風感」。言葉にすると似たような印象を受けるものの、そこには大きな違いがあります。より快適で健康的な温熱環境を重視されるのであれば、真に無風であるかどうかにも注視されることを推奨します。

共同研究事例:「世界初、冷暖房の「風」が脳活動に及ぼす影響を解明! | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)

共同研究事例:Physiological activity in calm thermal indoor environments ,Scientific Reports,10.1038/s41598-017-11755-3

輻射式冷暖房のデメリット

輻射式冷暖房のデメリットエアコンのデメリット
  • 導入費用が高額(全館空調と同程度)
  • 導入前に温熱環境の設計が必要(専門家が必要、買って取り付けるだけではない)
  • 輻射パネルの設置場所が必要
  • 足元が寒くなりやすい
  • 清掃が難しい
  • 温度ムラができやすい
  • 風によって乾燥しやすい

輻射式冷暖房はエアコンと異なり、建築付帯設備となります。つまり、建物の一部です。

エアコンのように、購入して設置するだけでなく、事前の温熱環境の設計などが必要となるため、導入費用は比較的高くなってしまいます。

しかし、「生涯コスト = 導入費 + ランニングコスト + 維持費」という観点で考えると、修繕費が安く済む素材を使うことにより、結果的に生涯コストを抑えることができるということです。

生涯コスト = 導入費 + ランニングコスト + 維持費

輻射式冷暖房も、家と同様に導入費用だけにとらわれることなく、生涯コスト(トータルコスト)で考えてみてはいかがでしょうか。

輻射式冷暖房の向き不向き

新築でもリフォームでも導入可能

輻射式冷暖房は、新築でもリフォームでも導入が可能です。

新築の際は、配管の取り回しや輻射式冷暖房のパネル位置の自由度が高まるため、よりベストなプランニングができます。

導入に向かないケース

輻射式冷暖房も、下記に挙げるような熱損失が多いところと湿度が高くなるところは不向きです。

  • 湿度が高いエリアで気密性の悪い建物
  • 断熱がない建物
  • 鉄筋の建物で、熱橋(ヒートブリッジ)対策がなされていない建物
  • 天窓がある建物
  • 窓ガラスが多い建物
  • 火を使う調理場など
  • コンビニなど外気の侵入が多く、風除室がないところ
  • ロビーや玄関など直接外気が侵入が多いところ
  • 焼き肉店をはじめとする換気回数が多い飲食店

この場合、エアコンとゾーニングを分けて併用する、外調機などを併用するなど、外部からの熱の処理を工夫したり、建築側の断熱や開口部対策が必ず必要です。

参考「輻射式冷暖房の適正を判断するための建物の条件」へ

輻射式冷暖房の価格・導入費用

導入費用の相場

輻射式冷暖房の導入費用の相場は、1坪(3.3㎡)あたり10万円〜13万円(最低100万円以上)とされています。

※各メーカー、輻射パネルの1台あたりの能力が異なり、必要な台数もことなるので、輻射パネル1台あたりの単価ではなく、トータルで判断することが大切です。

この価格帯は全館空調とほぼ同価格帯、リビングのみに限定すると温水式床暖房+高性能エアコンの価格を少し上回る価格帯となります。

昨今の建築費用の相場から、建築費のおおよそ10%~25%をプラスすることで輻射式冷暖房を導入することが可能です。

※新築住宅:約40万円~80万円/坪、RC造(マンションなど):約70万円~120万円/坪として試算

参考「輻射式冷暖房の価格や導入費用を正しく評価するために」へ

価格帯の変動要因

メーカー各社の見積参考例は、「建物の条件、開口部、利用状況によって見積が変わります」という表記があることがほとんどです。

エアコンは、どのような建物でも対応できるように冷暖房能力に余力を持っているのに対して、輻射式冷暖房は建物の状況に合わせて能力をフィットさせるような能力設計が必要なためです。

輻射式冷暖房の導入費用の変動要因
輻射式冷暖房の導入費用の変動要因

上図を参考に家づくりの設計を考えると、輻射式冷暖房の導入費用を抑えることができ、省エネで温熱環境のよい住まい作りを実現することができます。

参考:「輻射式冷暖房の適正を判断するための建物の条件」へ

輻射式冷暖房の種類

輻射式冷暖房は、主に輻射パネルの設置場所と仕組み(送風の有無)で分類されます。

 自立式壁式天井式床下式
エアコン接続・エアコン応用有風有風有風有風
輻射パネル単独無風無風無風無風

仕組みの種類

輻射式冷暖房の仕組みは、「送風の有無=エアコン(風)の有無」で大別されます。

 エアコン接続式
・エアコン応用式
輻射パネル単独式
送風の有無
設計の手法エアコン同様熱負荷計算が必要
設計難易度

エアコン接続式

エアコン接続式の輻射式冷暖房

エアコンの設置を前提として、輻射パネルも一緒に設置する輻射式冷暖房です。

エアコンの性能を活かすことが前提となっているので、輻射パネルを入れなくても室温調整は可能です。エアコン同様、送風や定期的な業者メンテナンスの必要はありますが、プラス輻射熱で体感温度を調整したい方におすすめです。

ただし、このタイプは、冷暖房能力をエアコンの風に頼っているところがあり、輻射式冷暖房のシステム全体における輻射熱成分の割合がどうしても少なくなってしまうため、輻射式冷暖房と表現してよいかどうかは議論がおきる可能性があります。

エアコン応用式

エアコン応用式の輻射式冷暖房
エアコン応用式の輻射式冷暖房

エアコンから出る風を天井や床の輻射パネルに当て、風で冷暖房をしながら輻射パネルを冷やしたり温めたりする輻射式冷暖房です。エアコンの風が直接人に当たらないように工夫を施します。

エアコン応用式の場合は、輻射パネルの結露の問題がありますが、エアコンの風があたることで結露しにくい仕組みとなっています。除湿機を併用する場合もあります。

なお、エアコン応用式の多くは、天井や壁裏などの見えないところに、エアコンに送風するためのダクトをつけます。このため、埃やカビがダクト内に発生した場合のメンテナンス費用、清掃コスト(例:寝室の天井式を設置した場合など)まで含めて検討することが必要です。

輻射パネル単独式

単独式の輻射パネル
単独式の輻射パネル

輻射パネル単独式は、文字通り輻射パネルのみで冷暖房を実現する輻射式冷暖房です。当社が開発している輻射パネルは単独式の輻射式冷暖房にあたります。

輻射パネル単独式は無風であることから、エアコンの風が苦手な方やアレルギー体質の方、生活の質を温熱環境の視点から高めたい方などにお薦めです。

設置位置の種類

自立式(パーテーション型・両面型)

自立式(パーテーション型・両面型)の輻射パネル
自立式(パーテーション型・両面型)の輻射パネル

内壁に近い間仕切、リビングや階段下のパーテーションなど、仕切りとして利用するタイプです。壁に取り付けるタイプとは異なり、輻射パネルの両面から放熱するので、両面から輻射の効果を得ることが可能です。

天井タイプと比較して、結露をしても輻射パネルの下部からドレン配管を通じて結露水を排出が可能です。壁に取り付けるタイプ同様にドレン配管から結露水の排出が可能です。

熱源機で作った冷温水を輻射パネルの中に送水し、冷暖房を行うのが自立式の仕組みです。暖房時には体温~お風呂のお湯程度の温水を、冷房時には冷水を循環させ、輻射(放射)によって空間全体に安定した温熱環境を構築しています。

夏季は輻射パネルの表面に結露を起こすことで自然除湿を行い、体感だけでなく見た目にも爽やかな涼しさを実現します。

自立式(パーテーション型・両面型)の輻射式冷暖房の仕組み

冷温水式のヒートポンプ室外機を用いて、24時間連続運転の表現をすることが多いですが、実際の利用方法としては、不在時・就寝時・季節の中間期は、「省エネセーブ運転」や「電源OFF運転」にできる24時間自由に設定が可能なタイマー運転をうまく利用し、省エネ効果も狙って利用されている方が多いです。

壁式(壁付け型・片面型)

壁式の輻射式冷暖房
壁式の輻射式冷暖房

壁に取り付ける輻射パネル(壁付け・片面パネル)で、冷えたり温まったりする放熱部が室内に面する片面だけのタイプです。壁に直接設置できるため設置面積が少なく済み、間取りの自由度が高くなることが特徴です。

しかし、壁付け型の輻射パネルは、冷房時は冷えて壁に伝熱するので、壁の表面に断熱処理を施さないと壁内結露が発生し、壁の中の腐食や劣化につながります。建物自体の耐久性を悪くする可能性があるので注意が必要です。

特に冷房時は壁付け型の輻射パネルの下の方が冷えやすいので、パネル下までしっかり断熱することを推奨します。

壁の工事をすると施工費が高くなる傾向にありますが、最近では、壁付け輻射パネルの設置時に断熱材の施工を壁側に行う会社も増えています。

また、天井型と比較して、結露をしても輻射パネルの下部からドレン配管を通じて結露水を排出が可能です。

壁内結露対策

壁付け型の輻射パネルは、壁面に設置することでデッドスペースがなくなり見た目もスタイリッシュになる反面、輻射パネルから出る冷熱対策をしっかり行わないと、壁付け輻射パネルからの冷熱で隣接する壁の内側が腐ってしまうリスクを抱えています。

壁内結露が原因の腐食事例

FUTAEDA株式会社の壁付け輻射パネルは、輻射パネルの下部まで高性能な断熱材を標準内蔵しているので断熱工事が不要です。

また、当社は断熱材付きの構造の輻射パネルの特許を2021年に取得しています。

FUTAEDAパネル(片面)の断熱材

一方、「壁に断熱材を設置しない」または「断熱材が内蔵されていない壁付け輻射パネル」に関しては、流れる冷水の温度にもよりますが、パネルと壁との間隔を壁面に影響がないように30cm前後の距離を開けて設置する対策方法が一般的です。

壁付けタイプの魅力の1つは、従来の輻射(放射)式パネルよりも場所を取らない点にあるため、前者の断熱材がない場合は、離隔距離を取る必要があり、その良さが半減してしまいます。そして後者の壁に断熱材を入れるという対策は、断熱材を入れる内装工事費がプラスで掛かることを念頭に置く必要があるでしょう。

天井式

天井式の輻射式冷暖房
天井式の輻射式冷暖房

天井式は文字通り天井に輻射(放射)パネルを設置する方式です。

夏場はパネルに冷水を流し、冷やされた天井からの輻射で人や壁の熱を吸収することによって、涼しさを感じることができます。

冬場は温水を流して天井面を暖めることで、人の体表面からの熱放射量が少なくなり、暖かさが感じられる仕組みです。

また、床や壁などにも輻射熱が伝わるため、低い室温でも快適で、部屋のどこにいても均一の暖かさが得られます。

しかし、冷房時は冷たい空気は下に落ちていくため温度ムラが出にくいと言えますが、暖房時は暖かい空気は上にいくため足元が冷えやすくなります。

冷房時の結露の観点から、湿度が低い地域(例:ドイツなど)ではオフィスや商業施設などで天井式の輻射式空調が多く導入されています。

天井式には大きく分けて「有風タイプ」と「無風タイプ」の2種類あります。

有風タイプ
天井式の輻射式冷暖房(有風タイプ)

有風タイプは、天井や壁にダクトを通す、あるいはエアコンに似た装置を埋め込み、その風を天井の吹き出し口に当てて室内環境を調整します。

エアコン内部の衛生問題や、ダクトなど隠れている部分の清掃が困難なことから、今後ますます高齢化が進んでいく流れも踏まえて、FUTAEDA株式会社では、後々のお客様の負担を可能な限り軽減できるようダクトが必要な有風タイプの販売は行っていません。

無風タイプ

無風タイプは、さらに「パネル+除湿器」と「パネルのみ」の2種類に分類されます。

「パネル+除湿器」は、夏季に室内の湿度を下げることで天井面を冷やし、結露しにくい状況を作ります。

対して「パネルのみ」の場合は、結露を防ぐためにパネルの温度を冷やすことができず、冷房能力を弱めて利用します。

パネル+除湿機パネルのみ
湿度を下げることでパネルが結露しづらく、天井を流れる冷水の温度を下げられるため冷房能力を高めることができる。結露しない温度の水を流さないといけないため、冷房能力が低くなる。水温を下げる場合は、結露の受け皿が必要になる。

FUTAEDA株式会社では使用目的の異なる2か所の自社施設(京都/福岡)で天井式輻射パネルの実験を行いましたが、高所メンテナンスの観点や輻射式パネル以外の付帯設備がいらないシンプルな形態がメンテナンスを含めてお客様にとって気軽であり、簡素でありたいと考えて、自立式や壁式の輻射空調をご提供したいと考えています。

 無風タイプでもっとも難しい点は、冷房時の結露処理です。

無風タイプの結露対策

  • 結露させないようパネルに流す冷温水の温度を制御する
  • 露点温度(※結露が起こる温度)を下げるために除湿機を導入する
  • 一旦結露させて天井から出る結露水を受け皿のようなもので集める

下図は、湿度に対する露点温度と空気温度の関係性を示しています。

相対湿度に対する露点温度
相対湿度に対する露点温度

温帯湿潤気候である日本の年間平均湿度は60~70%。夏場の室温を25~26℃に設定をする方も多いでしょう。その場合、露点温度は18℃前後です。

つまり、結露させないためには、真夏のもっとも暑い時期であっても19℃前後の冷水しか流せないことになります。天井式のパネルを結露させないためには、冷房時に1㎡あたり70Wくらいの発熱量しか出すことができません。

しかし、人はじっとしている状態でも発熱量は1人あたり100Wあるため、人を冷やすので精一杯で、室内全体まで冷やすには熱量が足りないことが多くなり、結果、輻射パネル以外の冷暖房機器が必要となるケースが多くなります。

床下式(床暖房含む)

床下式の輻射式冷暖房
床下式の輻射式冷暖房

空調機からの冷温風を床内に通し、窓際の床吹出し口から室内に送風することで、床面を冷やしたり暖めたりするのが床下式の仕組みです。

効果自体は天井式と似ていますが、熱の伝達形態は放射と対流を併用。この点が他の輻射(放射)式空調との大きな違いと言えるでしょう。また、冷温風だけでなく、床内に配管を布設して冷水・温水を通すタイプも登場しています。

しかし、夏場、床冷房だと、冷たい空気は上にいきにくいので、足元が冷えやすくなります。

暖かい空気は上に、冷たい空気は下に流れる性質があるためです。エアコンは上部に設置するため冬場、足元が冷えます。床暖房が温度ムラが少ないのは、下で発生した暖気が、上昇するためです。

※FUTAEDA株式会社では、床下型の輻射式冷暖房は取り扱っていません。

まとめ

輻射式冷暖房は次世代型の快適かつ健康的な空調設備として期待されている反面、まだ一般的な知名度はそれほど高くありません。

しかも、温熱環境の設計など、事前準備のプロセスが従来の冷暖房機器と大きく違う点に加え、メーカーによって構造や特性が異なるにもかかわらず、情報に乏しいのが実状です。そこで、輻射式冷暖房のことを少しでも知っていただこうと、このページを制作しました。

導入に際しての詳細は、「輻射式冷暖房の導入に必要な3STEPを詳しく解説」に詳しくまとめておりますので、あわせてご一読いただけますと幸いです。

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