快適性と健康性から考察する理想的な温熱環境とは

宮本 知典

九州大学工学部卒業。輻射式冷暖房「F-CON」の製品開発や国内外の熱負荷計算業務に従事。

温熱環境を評価する指標としてPMVが一般的ですが、主観評価で個人差があることや、健康性をあらわすものではないことから、温熱環境を多面的に評価することはできません。

また、「快適性≠健康性」であることから、快適性を表す指標値だけを鵜呑みに設計してしまうと、望ましい温熱環境から遠ざかってしまう可能性もあります。

本記事では、快適性と健康性の観点から、暮らしの質を向上させるための理想的な温熱環境とその実現方法について考察します。

理想的な温熱環境とは

1986年の創業以来、FUTAEDA株式会社は「世の中で今後変わるべく理想的生活スタイルを発見し、それを社員一丸となって提案していくことにより、世界中の人々へ喜びを感じていただこうという理念」を掲げてきました。

住空間に関連した事業では、理想的な温熱環境を構築し、住みよい暮らしを提供することが経営理念の実現につながると考えています。

そして、理想的な温熱環境を快適かつ健康的な温熱環境と定義し、無風の全館空調である「F-CON/輻射式冷暖房」の研究開発を進めています。

FUTAEDA株式会社が開発する無風の全館空調である「F-CON/輻射式冷暖房」においては、輻射熱による快適な温熱環境の実現だけでなく、無風がもたらす健康的な恩恵が得られるよう日々研究開発しております。

ところが、その研究開発の過程で、冷暖房設備の性能を上げただけでは快適かつ健康的な温熱環境を補いきれないことも、次第に見えてきました。

快適性≠健康性

温熱環境を評価するPMVやSET*などは、あくまでも快適性の指標であり、健康性までは測れません。

PMVは主観評価であり、SET*も温度分布が不均一な環境下での評価には不適切です。また、快適性と健康性は似て非なるもので、一律に扱うことができません。

例えば、夏季にエアコンの冷風が当たると、最初のうちは快適に感じるかもしれませんが、風に当たり続けることで、乾燥による肌トラブルや睡眠の質の低下などを招く恐れがあります。

このように、数値上は快適な温熱環境であっても、必ずしもそれが健康的な温熱環境であるとは限りません。

日本の住宅が抱えている課題

国土交通省は日本の住宅について、「断熱・気密性能の低い建物が多く、良好な温熱環境が得られていない状況である」と指摘しています。

・約7割は昭和55年省エネ基準以下の断熱性能
・冬季の死因の6割が心臓や脳、呼吸器疾患で、その相当数がヒートショックと深く関係している
・寒冷な地域より温暖な地域で冬季の死亡増加率が大きい

(以上、統計や事業者アンケートなどにより推計された2017年のデータ)

出典:国土交通省『我が国の住宅ストックをめぐる状況について』

省エネ基準が義務化され、2025年以降は一般住宅も含めたすべての建築物に高い外皮性能基準(≒高い断熱性能)と、少ない一次エネルギー消費量(≒省エネ)が求められるようになります。

ただし、日本は世界的に見ても高断熱・高気密住宅の後進国です。省エネ基準が上がってきたとはいえ、それでもなお出遅れている事実は否めません。

エアコン頼りの温熱コントロール

暑くてじめじめした夏から、寒くて乾燥した冬という大きな気候の振れ幅を持った日本。これまで、室内の温熱環境を快適に保つために、エアコンで室温をコントールするのが一般的でした。

エアコンがアプローチできる温熱環境の要素は、気温・対流・湿度(除湿のみ)の3つのみです。エアコンは高性能で高い技術が集積された冷暖房器具で、どちらかというと即効性や効率を重視して技術が進化してきました。

しかし、対流という性質上、温度ムラが発生したり、直接風が当たることによる健康リスクや、ほこり・ウイルスを拡げてしまう衛生リスクも伴ってしまいます。

エアコンのほこりやカビ

輻射式冷暖房の未成熟な市場

上記のエアコン事情から、温熱環境をコントロールする新たな手段として輻射式冷暖房が徐々に注目を浴びていますが、エアコンと異なりJISなどの明確な規格が定義されていません。

そのため、各社それぞれが独自の規格で製品アピールしており、適切な比較検討が難しい状況にあります。

現在の輻射市場では、測定値などの数値的根拠や、1つの指標を鵜呑みにしない複合的な観点で比較検討・設計することが、快適性と健康性を両立するために重要です。

次章では、不適切な温熱環境による健康リスクを例に挙げます。

温熱環境が健康に及ぼす影響

下図に示すとおり、温熱環境の条件は快適性・健康性に影響を及ぼします。特に住宅の温熱環境においては、過度の暑さ・寒さによって心身に大きなストレスを与えることがわかっています。

寒さによる健康リスク

  • 血圧変動に伴う循環器疾患のリスク
  • 鼻・喉の乾燥による呼吸器疾患のリスク
  • カビ・ダニ発生によるアレルギー疾患のリスク
  • 入浴中の事故のリスク
  • 部屋感の温度差があると、移動時に血圧が変動するリスク
  • 睡眠の質の低下

出典:住宅における温冷熱環境に関する快適性評価指標の開発に関する調査/環境省

暑さによる健康リスク

  • 熱中症のリスク
  • 血圧低下に伴う脳梗塞のリスク
  • 部屋感の温度差があると、移動時に血圧が変動するリスク
  • 睡眠の質の低下

出典:住宅における温冷熱環境に関する快適性評価指標の開発に関する調査/環境省

理想の温熱環境を実現するためには

温熱環境の設計が重要

上述の通り、適切に温熱環境を実現することは、さまざまな健康リスクの低減につながることが判明しています。

出典元:住宅の温熱環境と健康の関連(慶應義塾大学 伊香賀教授)

一般的な実現手段として、まずは住宅全体を考慮した高い断熱性能と気密化を実現し、冷暖房と換気制御を組合せることで、快適な温熱環境を維持することができるとされています。

建物の設計時には、見た目の意匠面のみならず、温熱環境といった環境・機能面も重視した設計が今後の業界水準として求められます。

無風による快適性と健康性

扇風機やエアコンの風に当たり続けると、交感神経が活発に働き、体調不良の原因となります。

風に当たるよりも無風のほうが平穏な状態でいられることは、弊社と九州大学が共同で行った実験でも証明されています。

研究成果『世界初・無風の快適さを脳科学視点で定量評価』へ

その他、無風環境には下記のようなメリットも挙げられます。

  • 直接風が当たることによる肌や髪の乾燥等が起こらない※
  • 室内のウイルス・花粉・ダニ・ほこりなどを巻き上げにくい
  • 空気を回さないので、駆動音や風切り音はほとんど感じない

※エアコンも輻射式冷暖房も、機能上加湿はできません

また、暮らし創造研究会では、無風の輻射式冷暖房の一種である床暖房がエアコンに比べて急激な血圧の変動リスクを下げるとの見解を示しています。

出典元:暖房の健康影響研究部会|暮らし創造研究会

輻射のチカラで理想の温熱環境を

いまはまだ世間的な認知度の低い輻射式冷暖房ですが、戸建てやマンションはもとより、オフィスビルや商業施設、さらにはより高い健康性を必要とする医療施設でも、着実に導入件数が増えています。

参考事例:無風の全館空調である『F-CON/輻射式冷暖房』の導入実績

しかしながら、輻射式冷暖房はその効果が期待されている反面、国家標準の規格が定まっておらず、情報も乏しいのが現状です。

そうしたなか、FUTAEDA株式会社では輻射式冷暖房の導入を検討されている企業様へ、無料で温熱環境コンサルティングを承っています。

  • 輻射式冷暖房を有効活用できるかわからない
  • どの輻射式冷暖房メーカーにすべきか判断できない
  • 事前の温熱環境設計に関する知見がない

上記のような課題やお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

自社の研究施設を持ち、科学的根拠に基づいて開発を続けてきた弊社が、皆様のより良い空間づくりをサポートさせていただきます。

無風の輻射式冷暖房システム「F-CON」

F-CON製品ラインナップ

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弊社モデルルーム(東京・京都・福岡)にて、輻射式冷暖房「F-CON」がもたらす健康的で快適な空間を「体感」していただける機会をご用意しております。

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